痔に対する4段階注射療法(ジオン・ALTA療法)の実際

痔に対する4段階注射療法(ALTA療法)とは?

痔核の注射療法とは、高度の外痔核や痔瘻、感染などを伴っていない軽度、中等度(Ⅰ度~Ⅲ度)の内痔核に対してALTA(硫酸アルミニウム・タンニン注射液)を注射することにより痔核へ入っていく血管を閉塞し、痔核自体の腫脹となる原因の静脈叢も硬化することで痔核の縮小と症状の緩和を目的とした治療方法です。
 
この方法は、従来より手術適応である「脱出する内痔核」についても効果があり、新たな痔核治療の選択肢の一つとして最近加わりました。

注射療法による治療のため、内痔核を切らずに脱出と出血を治療します。
痔核を切り取る手術と違って痔核の痛みを感じない部分に注射するため、「傷口から出血する」、「傷口が痛む」といった患者さんの身体的・精神的な負担が軽減されます。

■その利点・欠点は?
 注射療法は入院することなく日帰り手術として施行することが可能で、施行時、施行後の痛みが少ない、早期に症状改善が得られる、体に対する侵襲が少ないなどの利点があります。また、手術に比べて合併症が少なくなっています。
 
 しかしながら高度の痔核、外痔核(軽度のものは除く)、痔瘻、直腸脱などが併存するものは注射療法のみでは治療が困難です。腎機能の悪い方などにも施行が制限されます。また、痔核の再発の可能性もあり、その際は再度の注射療法が可能な場合もあります。

注射療法の実際

痔に対する注射療法は「四段階注射法」という特殊な手法で投与されます。
この治療法は高度な技術を要するため、現在では「当手技に関する講習会を受けた専門医の登録施設」においてのみ治療が実施されています。

■実際の流れ(日帰り手術の場合)   →詳しい説明はこちら

・前日夜に下剤を内服します
・当日は朝から来院していただき、準備、着替え、点滴などを開始

○手術は通常午前11時ごろより行います(通常30分~1時間)
・診察台・手術台に左を下にして横向きになります
・血圧、心拍などを測定するモニターを装着します。
・必要に応じて肛門周囲への麻酔を行います。
・肛門の中を観察する機械を挿入して観察
・ALTA(注射用薬剤:ジオン注)を一つの痔核に対して4カ所に分割して注射
・マッサージをして薬剤をいきわたらせます
・複数の痔核があるときはそれぞれに投与します

○手術後は点滴、全身状態の観察をしながら3時間ほど観察室で休んで頂きます
・全身状態、患部の状態を観察後、帰宅可能となります
・当日から通常のお食事、入浴などが可能です
・1週間ほど内服薬、外用薬を使用します
・翌日、1週間後に外来にて観察を行っていきます

■患部投与後の変化(一週間から一か月)
・投与後の早い時期に痔核へ流れ込む血液の量が減り出血が止まります。
・脱出の程度も軽くなります。

・投与した部分が次第に小さくなり、引き伸ばされていた支持組織が元の位置に癒着・固定して脱出がみられなくなります。